中折れハットについて

真ん中にへこみのある、正面から見るとクラウンがM字型のシルエットをした帽子です。日本語では中折れ帽としてひとまとめにされますが、本来はいくつかの種類にわかれます。ひとつはソフトハットで、非常に柔らかいフェルトで出来た帽子です。こちらは手でつまんでヘコミ(フロントピンチ)を作ってかぶることから、真ん中や前方に独特の形状が作られます。現在「中折れ帽」と呼ばれる帽子の多くは、ソフト帽由来のヘコミの形をしています。シルクハット・ボーラーハットが上流階級の帽子であるのに対し、労働者階級の帽子として使用されていました。かつてはネクタイのように、紳士には欠かせないファッションアイテムでした。

もう一つはホンブルグで、こちらはボーラーハットの真ん中を凹ませた形をしています。イタリアのタバコ会社での労働争議のさなかに代議士が杖で山高帽を被っていた頭を殴られ、帽子の頭頂部に深いへこみが出来たのがはじまりで、彼はこれを「名誉の帽子」として被り続けました。西ドイツのホンブルグで流行していたこの帽子を当時イギリス皇太子だったエドワード8世が自国に持ち帰った結果、上流階級で流行。アメリカなどにも伝わり、世界的に広く普及しました。

これらの帽子をより洗練したのが有名な帽子メーカーの「ボルサリーノ」です。現在の中折れハットの原型はほぼボルサリーノのデザインから来ており、「前下り・後ろ上がり」の帽子を初めて作ったのもこのボルサリーノです。世界的な帽子メーカーとなった後、世界恐慌の時期に一時生産力を落としたものの、ブランド名がそのまま題名となった映画「ボルサリーノ」のヒットにより再興。今なお高級帽子メーカーとして名を馳せています。政治家の麻生氏が愛用しているやたらダンディでオシャレな帽子はボルサリーノ製のようです。この他、フェドーラやトリルビーなど、いくつかの細かなジャンルがあります。

日本では中折れ帽を指す言葉が混乱しており、ホンブルグをボルサリーノと呼んだり、中折れ全体を指す言葉としてソフトハットという言葉を使ったりします。

中折れハットの種類・デザイン

最も正統なのはフェルト製のリボンを巻いたものですが、麦わらから柄物・デニム・ツイード・本革・レースなど、かなり多岐にわたる素材のアイテムが出ています。つばの長さもシルエットも様々ですが、基本的に中折れの形を型入れしているため硬い素材のものが多くなっています。このためあまり帽子をかぶり慣れていない方がかぶると、着心地が悪く感じられることがあります。また、頭囲があっていても頭の形があっていないと要所要所を押し広げながらかぶることになるため、こちらも着心地悪く感じられることがあります。

着心地の良いものとしては、やはり柔らかいもの、そして中折れ部分に「もどり」と呼ばれる凸型の膨らみがあるものがおすすめです。つばの形には種類があり、前も後ろも全部植えに巻き上がった「オールアップ」、後ろは巻き上がり前は下がった「スナップブリム(前下り)」、前も後ろも全て下がった「オールダウン」があります。これら以外にもアシンメトリーなハットなどがあります。

最近流行なのはつば広のもので、こちらは日よけを兼ねたものもあります。夏のサファリハット以外の選択肢として男性にも女性にも人気のタイプとなっています。コサージュや羽飾りやビッグリボンなど、飾り自体も多岐にわたります。

どんな人におすすめ?

男性でも女性でもかぶっていただける帽子です。かなり幅広いデザインのものが含まれるので、自分に似合う形をじっくり探すと良いです。選ぶポイントはクラウンと中折れの高さ・中折れの形・ツバの広さの3つがメインになってきます。クラウンや中折れの高さが高いものは面長さんには似合いません。逆に、浅いものは丸顔さんには向きません。

中折れの形は正面から見るとわかりやすいです。色々なシルエットがありますが、丸いシルエットのものは丸顔さんに、四角いシルエットのものはベースボール・四角顔さんに、上に細くなったものは逆三角顔さんに合います。つばの広いものは、大顔さん・面長さん・四角顔さん・丸顔さんに、ツバの狭いものは小顔さん・逆三角顔さんにおすすめです。

かなり個性的な形のものもあるので、実際に被って試してみてください。

中折れハットにおすすめのコーディネイト

 

多岐にわたるデザインで様々な雰囲気のものがありますが、ほとんどの中折れ帽子はどこかしらキッチリとしたきれいめな雰囲気をもっています。洋服に合わせて買うのがもっとも良いですが、「ちょっとカジュアル」「ちょっと個性的」ぐらいのものを購入すると、幅広いファッションに合わせやすくて便利です。

キャンバス素材の無地のハットであるとか、フェルトハットであればリボンがボーダー柄であるものなどがオススメです。男性的な上にかっちりした雰囲気の帽子なので、正統な雰囲気のハットだとカジュアルでガーリーな女性ファッションには合わせにくいことがあります。その場合は、コサージュやビッグリボンなど、女性らしいワンポイントを帽子に加えると、グッとコーデがまとまりやすくなります。自分に似合う形のシックすぎない帽子さえ選べば、カジュアルにもきれいめにも比較的合わせやすいので、1個持っておいても損のない帽子ではないかと思います。正装に合わせる場合は、黒いフェルトでリボンを巻き、羽根などの飾りをつけない正統派のハード(固い)なホンブルグが無難です。

かぶり方

しっかり深くかぶりすぎると中折れの凸凹部分が潰れます。そのまま長時間かぶると、帽子の変形の原因にもなります。帽子のトップに軽く頭の当たる感覚があった場合、それ以上深くかぶってはいけません。あまりにも不安定で深くかぶらないと心配な感じがする場合は、頭囲が大きすぎる可能性が高いです。詰め物などをして頭囲を小さくするか、もしあればワンサイズ小さいものを選んでみてください。中折れのモドリがない場合、かなり帽子のサイズ感や形があっていないと不安定になりがちです。

基本的にフィット感があったり着心地が良かったりするデザインを目指して作られた帽子ではないため、それを踏まえて着こなす必要があります。前下り・前上がりの帽子によって多少かぶり方が変わりますが、基本的に水平にかぶるほうがよりシックでダンディな感じ、後ろに倒すと軽くてカジュアルな感じになります。ツバ自体が前上がりだと、更にカジュアル感が出ます。

水平にかぶるのは少し古い感じもするので、少し後ろに倒してかぶったほうが良いと思います。もちろん、クラシカルな雰囲気を出したい場合は水平のほうが良いです。丸顔さん・大顔さんは後ろに倒したほうがより似合います。